金沢地方裁判所 昭和24年(行)13号 判決
原告 山城礼班 外五名
被告 山代町長
一、主 文
原告の請求を却下する。
訴訟費用は原告の負担とする。
二、請求の趣旨
原告訴訟代理人は「被告は石川縣江沼郡山代町の議会を別表記載の議案につき招集すること、訴訟費用は被告の負担とする」との判決を求めた。
三、事 実
原告等は山代町議会議員、被告は山代町長の職にある者であるが、地方自治法によると、普通地方公共團体の議会は定例会として毎年六回以上招集さるべきこと而してその招集はその團体の長がこれを爲すことになつている。しかるに被告はその就任以來現在に至る迄一回の招集すらしないから原告等は同法第百一條に基き既に四回、近くは昭和二十四年十月八日付内容証明郵便をもつて議員定数の四分の一以上の者から会議に付議すべき事項として別表記載の各議案を示した上、臨時会の招集を請求した。ところが被告は今もつてその招集をしないから裁判所に出訴してその招集すべきことの裁判を求めるため本訴に及んだわけである。しかり而して日本国民は憲法第三十二條により裁判所の裁判を受ける権利を有し、又裁判所は一切の法律上の爭訟を裁判する権限を有するから、地方自治法に特段の規定なき限り本件のような行政廳の不作爲についても裁判を求めることが出來るものと解する、と述べ、
被告訴訟代理人は原告の請求を棄却する、訴訟費用は原告の負担とするとの判決を求めた。
四、理 由
さて、考えてみるに、原告の本訴請求は要するに、原告等は山代町議会議員として地方自治法第百一條に基き普通地方公共團体の長たる被告山代町長に対し、昭和二十四年十月八日付内容証明郵便をもつて議員定員の四分の一以上の者から会議に付議すべき事項を示した上山代町議会臨時会の招集方を請求したに拘らず、被告はその招集に應じないから本訴を提起して、その招集を命ずる裁判を求めるというのである。併し、右地方自治法第百一條第一項後段の請求があつた場合の議会招集行爲が行政廳のいわゆる自由裁量処分であるか或は法規裁量処分であるかは暫く措くとしても、右のように行政廳たる被告の不作爲に関し行政的一般監督権を有しない裁判所が右被告に対し、行政行爲の一である議会の招集行爲を命じ或は被告に代つて自らこれを爲すというようなことは特別の規定がない限り許されないと解すべきである。何となれば、行政権を一般に行使するか否か或は如何に行使するか等は專ら行政機関に委された事項であつて、裁判所は唯その行使された結果について司法的保障機能の建前上具体的な法適用の判断を爲し、その行政処分の適法違法或はその公法上の権利関係を確定するにすぎないからである。すなわち、裁判所が行政廳の不作爲に対し積極的に処分を命じたり、或は爲された行政処分を取消し、これに代る行政処分を自ら爲し又は行政廳に命ずるというが如きはすべて司法権の限界を破るものとして許されないといわねばならない。果してそうだとすると、本件の如く被告において山代町議会の招集をしないからとて、裁判所がこれに対しその招集を命ずるというようなことは右趣旨から考えて許されないから、原告の本訴請求は結局不適法な訴というべきである。さようなわけで、原告の右請求を却下することとし訴訟費用については民事訴訟法第八十九條を適用して主文のように判決するのである。
(裁判官 北野孝一 米光哲 向井哲次郎)